IHP処理はチタンなど難加工材の切削やプレス加工を可能にする表面処理です

金型の耐久性について

表面処理と金型の耐久性について

現在、金型の表面処理は様々な種類が開発されています。そして費用対効果に優れ「利益を出すには表面処理は不可欠」とまで言われています。
加工で利益を出すためには、金型の使用可能回数を増加させ、イニシャルコストを圧縮することが効果的で、表面処理も高硬度の皮膜を表面にコーティングさせることで「摩耗」を防止し金型の耐久性は大幅に向上しました。

各種表面処理の特徴

DLC「ダイヤモンドライクカーボン」処理
金属表面にナノレベルの薄膜を形成し優れた表面の特性を得られます。
低摩耗抵抗性(高硬度)、低摩擦係数、耐凝着性、赤外線透過性、ガスバリア性、耐腐食性など様々な機能があります。
しかし金型に使用する場合に押さえておきたいポイントとしては、DLC処理は優れた特性を持ちますが、剥がれやすい短所があります。
皮膜が硬く、金型の硬度と差があるため卵の殻のような状態になります。よって金型が扁平を繰り返すと剥がれやすく、面圧を低く抑える必要がある。
DLC処理は優れた特性を得られますが、処理コストが高く、再処理が難しい欠点があります。

 

ハードクロムコーティング(メッキ)
JIS規格では膜厚2μ以上、硬度HV750以上で耐摩耗性・耐食性・潤滑性に優れています。肉盛りめっきが可能で、最大で2mm厚のめっき処理が可能になります。
硬度はHRC60程度で、焼入鋼、窒化鋼と同程度です。処理コストは比較的安価で、用途としては焼入れコストを抑える目的で、生材に処理をし、表面の硬度を稼ぐことで、焼き入れ鋼並みの耐摩耗性を得られれる。欠点は300℃程度まで加熱されると、めっき皮膜中の水素が放出され硬度が急激に低下するので、高温になる条件では使用ができない。
また表面は鏡面に見えるが、実際は粒界が露出しているため、粒界腐食が発生し防錆効果は劣る。

 

窒化チタンコーティング
黄金色のコーティングでドリルや切削工具などでよく目にします。硬度は、HV2000〜2300で、他の表面処理と比べると劣るが、耐摩耗性と靭性に優れるためプレスパンチなどに使用すると効果が発揮される。また600℃程度の温度まで使用できるため、切削工具など局部的に高温になる加工でも使用できる。

 

IHP処理
メッキやコーティングではなく、金型の表面を機能化させ強固に流体潤滑を維持することで、金型の摩耗を防止する。
メッキなどコーティングでは無いため剥がれの発生がなく、処理及び再処理コストに優れる。しかし潤滑特性を改善することで特性を得るため、無潤滑では効果が発揮されない。

表面処理と問題点について

当たり前の話ですが、金型寿命までの加工個数が、1万個から2万個に増えれば、金型のイニシャルコストは1/2となり利益率は改善します。
それゆえに様々な表面処理が開発され、プレス加工メーカーも表面処理を利用するノウハウを向上させてきました。

 

金型の摩耗を防ぐためには、金型表面に硬化層を形成することが効果があるため、コーティング(メッキ)処理は古くから金型に利用されました。そして超高硬度の表面処理も開発され、金型の耐久性は著しく向上しました。

 

しかし金属のプレス金型は過酷な条件で使用されるため、コーティング(メッキ)は剥離する問題は深刻で、バインダーなどコーティング前の表面の開発も進んできましたが、金型表面に卵の殻のような硬い皮膜が乗っているような状態のため、確実な密着は現在でも完成していません。熱膨張係数や材質、硬度、伸びも異なる同士なため難しいのです。
DLC処理などは剥離が発生しなければ、かなり長期間使用できるだけに剥離問題は深刻です。

 

さらに再処理(再コーティング)も問題と考慮する必要があります。
再処理をするためにはコーティング層すべてを剥離してから再処理をする必要があります。しかし高性能な皮膜は剥離が難しく、エッチングによる溶解などで対応することになるため、剥離処理+再コーティングを行うと再処理コストが高くなってしまう問題があります。DLCなどは再処理を受け付けていないメーカーもあるので注意が必要です。

 

弊社のIHPもそうですが、近年になってコーティングではなく金型の表面を改質し、耐摩耗性を向上させる表面処理が開発されました。
硬い層で金型の摩耗を防ぐのではなく、表面を機能化させ流体潤滑を強固に維持させ摩耗を防止します。安価で効果に優れるため、自動車部品に使用されるハイテン鋼の金型などから利用が広がっています。コーティングではないため下地の必要がなく処理コストが安価で、再処理も容易なため費用対効果に優れた表面処理で急速に広がっています。

 

最後は宣伝になってしまいましたが、IHPの効果をぜひお試しください。

マイクロクラックの防止について

金型の寿命としては、摩耗による使用限度の限界まで使えれば理想的なのですが、虫食いといわれる表面の剥離やマイクロクラックが発生すれば、金型の使用期間が短くても使用不可になり、金型修正が必要でイニシャルコストを悪化させます。
コーティングの剥がれも同様でコーティング層が摩耗するまで使用できれば良いのですが、1箇所でも剥がれが発生すれば高額なDLC処理でも使用不可になります。

 

これらは摩耗とは別の現象なので、DLCコーティングなどで表面を硬化させても、繰り返し応力が掛かれば金型表面の粒界に歪が蓄積されます。
歪が蓄積されると粒界からマイクロクラックが発生します。これは粒界が大きいほど発生しやすく、粒界が微細だとクラックの発生を抑えることができます。

 

IHP処理の特徴の一つに金型表面の粒界が微細化する効果があります。
微細化した組織は金属疲労に優れ、剥がれ、クラックの発生を防止することができます。

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